大学では”まちづくり”とは「身近な環境をより良くするために誰かと協働していく、自律的な自治のツール」だと習い、自分とまったく違う人々と触れ合える場所としての都市、その街路を愛し、住民の手で大切に守ることの重要性の学んだ著者は、いざ社会に出てみて愕然とします。
住民も行政も建物、街路、公園などを維持管理出来なくなった結果、「公」に代わって「民」すなわち企業がそれらに積極的に関わる姿でした。
「みんな」のために称する開発には「わたし」も「あなた」も含まれていないのでした。そして本来あるべき、開発や建設に先立つべき住民同士の対話、何よりも「言葉」が欠けていたのでした。
まちづくりの現場に20年携わった著者が記した抵抗の記録。
そこには絶望があり、反省があり、希望がありました。
神宮外苑、渋谷、明石市、中野駅、銭湯、能登など具体的な体験から語られる「言葉」をまずは一緒に拾い集めてみてください。
森まゆみ、武田砂鉄推薦
第1部 再開発の言葉
第1回 モア4番街のオープンカフェ
第2回 神宮外苑の再開発
第3回 生きられる町並み
第4回 誕生を祝うまち
第5回 「東京大改造」は持続可能な開発か?
第2部 足もとの言葉
第6回 自分の家のように感じる(でも家ではない)
第7回 頼りなく外へ出る
第8回 百年の森林(もり)を生きる
第9回 「取るに足りなさ」との闘い
第10回 コモンズを破壊しない建築は可能か?
第11回 「創造的復興」――能登から問い直す
第12回 普通に一緒にいる――外国ルーツの人々
第13回 足裏の記憶――『大邱の敵産家屋』と森崎和江
第14回 覚えていたい――認知症と高齢者
おわりに
著者:西本千尋 出版社:柏書房 2025 ソフトカバー 216p
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