韓国に来る前に持っている本を全部売った。古本屋のおじいさんが部屋まで来てくれて十年間私が引越しのたびにひきずって歩いた活字の群れをそっくり引き取ってくれた。さよなら 私の本たち。それはたいそう重かった。
「本って、本当に重いですよね」私が言うと おじいさんが答えた。「さようでございますもともと木でございますからね」
(第一章「プラタナス」より)
韓国語で木のことを「なむ」という。「なむ」という音が著者の中に根をおろし、それ以来、著者は日本、韓国、沖縄で暮らし、詩をはじめとする文学について書いてきた。
古くは90年代中頃から現在までに至るまでそれぞれの地で感じ、言葉にし、表現してきたエッセイの集成。木のように芯の強くしなやかな文章が続く。何度も読み返して欲しい。
編:斎藤真理子 出版社:イースト・プレス 2025 ソフトカバー 280p
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