「夫は警棒で殴られて倒れたのです。あの、カトリックセンターの前で」
今、私はその場所を歩いている。
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社会的トラウマと集団記憶、特に韓国現代史に起きた惨劇に焦点を当てる作品を中心に制作しているソウルを拠点に活動するドキュメンタリー写真家、キム・ウンジュの作品集。
2024年12月に韓国で起きた戒厳令がなぜあれほどの事件になったのか、韓国の歴史、特に本書の題材となっている光州事件(「5・18光州民主化運動」)知らずに理解することは難しい。
1980年、全斗煥(チョン・ドゥファン)が主導する軍部による戒厳令の発令をきっかけに、5月18日から10日間に渡って起きた「5・18光州民主化運動」。戒厳軍による無差別的な武力制圧により、民主化を求める多くの光州市民と学生が犠牲となった。
作者は15年に渡り犠牲者家族や負傷者を撮影してきた。
本書は史跡指定されている民主化運動の跡地で当事者を撮影した33名のポートレートと、彼らへのインタビューから書き起こした証言から構成されています。巻末には民主化運動の流れや各史跡の詳細、キム・ウンジュによる後文が入り、1980年5月に10日間にわたって160人以上の犠牲者や行方不明者を出した民主化運動を一人一人の記憶を通して辿れる写真集となっています。
歴史の深部を抉るブックデザインにもご注目ください。
日韓英併記
languages : Japanese,English,Korean
”幼い子の手をひいて帰らぬ夫を光州刑務所まで探して歩いた女性、道庁舎で銃弾に倒れた仲間の声の幻聴に涙する男性、赤十字病院前の死傷者リストの中に夫を見つけそのまま動けなくなってしまった妻、遺体が一時置かれていた国軍統合病院で今は亡き息子に遺された家族の様子を語りかける母。
キム・ウンジュは放置され取り壊されていく光州民主化運動の跡地で、こうした人々が生きてきた物語と、その中に積み重なるトラウマを辿るように写真を撮影してきた。廃墟に佇む人々を照らすおぼろげな「光」は、45年の歳月を経ても未だ癒されることのない光でもある。そしてそれは、キム・ウンジュが彼らの記憶をより広い世界へと伝えようと写し出す光でもある。”
(Three books)
著者 author:Kim Eun Ju キム・ウンジュ デザイン:鈴木萌 出版社 publisher:Three books 2025 200mm x 255mm x 35mm 268p
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