"紙の雑誌には流れていく情報ではなく、沈殿する感情を刷り込みたいのです。”
『NEUTRAL』『TRANSIT』『ATLANTIS』を創り上げた加藤直徳は雑誌を作ろうにも自己模倣に陥り、新しいものを生み出せず、創作のヒントを得るためインドはタラブックスの工房を訪ねる。タラブックスでは絵本を一枚一枚シルクスクリーンで刷り、手で束ね、糸で綴じていく。その工程を目の当たりにし、「自分でつくる」と決める。
そしてここに自身で刷るリソグラフとオフセット印刷を駆使し、世界のどこにもない、一冊しかない雑誌がここに生まれた。
NEUTRAL COLORS第7号です。
特集「健康に還っていくからだとこころ」
ケガで生きがいのスポーツを失うこと、記憶力と集中力の低下、感動ポイントの喪失、老いへの漠然とした恐怖。
齡50を迎え、健康について考える機会が劇的に増えました。
でも健康への意識は身近な場所にも溢れていました。
うつ病による自殺未遂、配偶者の死、克服できない過去のトラウマ……。
そして健康とは、決して若さ(年齢)によって担保されるものでなく、
広くみんなのことでもあることがわかりました。
本特集は、健康に還っていこうとする人たちの小さな気づきの連続です。
(編集長)
●ニューヨーク
幻想としてのバスケットボール
12 歳で夢中になった少年時代から中年に至るまでのバスケ日記。 社会人チームでのプレー中に起こった前十字靱帯断裂という大怪我。医師は引退を告げたが、諦められなかった。手術を受けることを決め、戻るためではなく続けるためのリハビリを始める。 そしてNYへ、再びバスケをしに行く。チャイナタウンのコロンバスパークで、移民たちが立ち上げたバスケットボールコミュニ ティCBC(Chinatown Basketball Club)に出会う。国籍や世代を超えた人々がバスケを通じて居場所を見出す姿を見る。彼らとプレーしながら、いつの間にか、バスケの渦の中へ戻っていく。これはいつかの自分への、そして12 歳でバスケを始め、これからも続けるであろう我が子へのメッセージ。
文=加藤直徳 写真=野口恵太
●中国・雲南省
毒キノコ鍋
ゼッタイ25 分待ってください!
毒キノコ鍋を食するため、中国・雲南を訪れる。ここはキノコの王国、約1600 種もの種が自生する。鍋のメニューはキノコのみ。その旨味は天下一品だという。大皿でキノコが運ばれ、一気に投入、箸や皿が回収され、25分にセットされたタイマーが置かれる。「25 分以上煮れば解毒される。それまでは一切手を つけてはいけない」。雲南省では年間 1000 人以上がキノコ中毒 で搬送されるという。タイマーが鳴り、食中毒が発生した際に 病院へ提出する検査用スープが採取される。運命はいかに ! ?
写真・文=野口恵太
●韓国・チェジュ島
水に取り憑かれた、ある女性の物語
Chise は幼少期より、水に身体を浸けたいという欲求を抑えられなかった。大人になっても衝動は止まらずに、川や運河や海に飛び込んできた。彼女は水に入ると、セロトニンが流れ込ん でくるような感覚になり、表情が明るくなり、お喋りになり、気分が高揚する。感覚が敏感になり、肌に触れる空気の温度、 柔らかさ、匂いまで感じとれるようになる。このストーリーは、韓国チェジュ島でヘニョ(海女さん)と海に入った3日間の記憶。 水へ中へ。
文=Chise
写真=Kim Tae-woo (STROLL PRESS)
●タイ・イサーン地方
瞑想でこころを鍛える
「こころが鍛えられる瞑想施設がある」と聞いて、タイ東北部イサーン地方の森にある瞑想修行場ウィリダンマ・アシュラムを 訪れた。年に数回、孤独感から始まるこころの不調をほぐすために。そこでは托鉢や朝昼の食事を通して他者との穏やかな関 係性を感じ、僧侶スティサート師から手動瞑想や歩行瞑想といった「チャルーン・サティ(気づきの瞑想)」を学ぶ。自分の体の動きに意識を向けて気づきを得ることで、ネガティブな思考の連鎖から解放される。
文=加藤直徳 写真=宮本 武
●インドネシア・スマトラ島
裂け目より〜
野湯をめぐる
野湯探しがライフワークの写真家は、インドネシア・スマトラ島の北に位置する、世界最大のカルデラ湖に来た。約7万4000 年前に起きた、過去数十万年で最大規模とされる超巨大噴火の跡地だ。遥か以前の悠然たる地球の景色の中に、人びとが服のまま湯に浸かっている。こんな健康的な場所はあるだろうか?
写真・文=山谷佑介
●奥三河
山伏修行、絶望ジャーニー
社会のマジョリティに適応できず、苦しみを感じていた彼女は山伏修行を体験する。白装束を纏い、一切の私語を禁じられた静寂の中で、先達の指示に「うけたもう(受け入れます)」 と発しながら山を歩き、祈る。生きたまま一度死んで生まれ変わるとされるこの修行を通して、己と向き合うこと決意する。
文=田中菜月 写真=田ノ岡宏明
●NY
フェアじゃない〜
アメリカの医療と政治
佐久間裕美子が、乳がん宣告から 3 回の手術を経て自身の身 の平和を取り戻すまでの記録。日米のどちらで治療するか。 予防手術を受けるか。誰に手術をしてもらうか。乳房の再建をするか。苦しさを抱えたまま一つひとつを選ぶ過程で見えてきたのは、世界がいかに「フェアじゃない」かだった。
文=佐久間裕美子 写真=野口恵太
●沖縄・西表島
関野吉晴
旧石器時代の生活
77歳の関野は新たな冒険、旧石器時代の生活は健康か?に挑んでいる。実践場所は、東京・新潟・北海道・沖縄の西表島 ある。鉄を使わず石器のみで家を建て、自然の素材から何日もかけて道具をつくり、失敗を繰り返しながら多様な食材を狩猟・採集して生きる。その生活は現在人に幸福をもたらすのか?
文=関野吉晴 写真=西村亮哉
●メキシコシティ
RRD ジェントリフィケーションの波を越えて
Red de Reproducción y Distribución(RRD)は、メキシコシティを拠点とする6人のアートコレクティブ。低コストの印刷物やZine を制作・配布し、路上のKIOSK を拠点にアートを街へ開放する。その手段は、希少性を求めるオリジナルではなく、誰でも複製可能で乗っとりができる海賊行為のようだ。
文=加藤直徳 写真=野口恵太
●ベルギー
霞を食べて生きていきたい
カトリーヌ・ロングリーは(Katherine Longly)食と体の関係 について語る証言集「TO TELL MY REAL INTENTIONS, I WANT TO EAT ONLY HAZE LIKE A HERMIT」を発表している。 いままでその参加者に自分自身を含めずにいたけれど、表現者として向き合うためにプロジェクトに自分を加えた。
文=Katherine Longly
and more!!
編集:加藤直徳 装丁:加納大輔 発行:NEUTRAL COLORS 2026 272P 182mm × 257mm
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