主観と客観の間からの視点で物事を見つめる。
-from an oblique-
介護の仕事に携わってきた著者が一年かけて編集した老いにまつわる全く新しい情報誌です。
創刊号では「老い」「福祉」「介護」における日本の歴史(これまでの歩み)を写真と数々の文献を元に精査しここに分かりやすく語りかけてくれています。
平安中期に見られる「姨捨」(をばすて)の言葉から始まり、室町、能、を辿り「楢山節考」へ
現在も「おばすて」という言葉が点在する長野県千曲市、「楢山節考」のロケ地「真木集落」への単独行と思われる取材は知らない世界を教えてくれました。とても素晴らしい紀行文です。
江戸時代の医師についての記事を挟み、社会福祉制度が本格開始される明治、大正、昭和へ
社会福祉の発展に尽力した渋沢栄一、岩田民次郎の紹介、老いと文学の関わりも交え(萩原朔太郎、有吉佐和子「恍惚の人」)、その時代の背景、人物もしっかりと記載されています。
現在の介護保険制度と自立支援について述べ終着する。
洗練されたデザインと写真が僕らが避けては通れない「老い」というテーマを身近にしてくれる。
これだけのものを一人で創り上げるのは著者の「想い」があってこそ。
情報誌だからと言って使い捨ての情報ではなく、ずっと大切に残る物語が詰まっています。
手に取って頂けると分かるのですが本の重みがその証左です。
読者の皆さんには自信を持っておすすめしたいと思います。
表紙には美術作家植田志保さんによる「老い」をテーマにした桜の木版に描かれた絵です。
発行:studio-kawata 2016.12 110p
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