あるときは少年、あるときは詩の神さま。
そしていつもはとてもいい大家さんだった。
(あとがきより)
『いちべついらい』(夏葉社)では詩人の妻田村和子さんとの暮らしを、そしてこの「こんこん狐に誘われて」ではその詩人との暮らしが描かれている。稲村ヶ崎の田村家に間借りすることになった橋口さん夫婦。酒を愛する詩人との暮らしは緊張から鎌倉の海のように穏やかなものになっていく。やがて別れの気配を漂わせながらも橋口さんの筆致は追憶の糸をゆっくりと丁寧に辿る。田村隆一というひとりの人間の素顔を見つめていた著者にしか書き得ない遠い日々の出来事。
『珈琲とエクレアと詩人』(港の人)『いちべついらい』と3冊合わせてお読みください。
著者:橋口幸子 写真:松原蒼士 装画:早川志織 出版社:左右社 2020.11 ハードカバー 144p
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