手のなかでふるえる本
本のなかでふるえる言葉
言葉のなかでふるえる気持ち
気持ちのなかでふるえる名前
名前のなかでふるえる命
命のなかでふるえる声
声をひと声出してみる
このちいさな椅子の上から
それでしか幕はあがらない
ぼくらそうして生きてきた
みんなそうしていま生きている
さあ発表会がはじまるよ
発表会がはじまるよ
(発表会)
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冒頭のこの「発表会」という詩から素晴らしい。
そうだ、ぼくもコップのようにふるえながら、けれど気丈に、声を出して、生きてきたのだとこの詩人の言葉に励まされた。
東京から長野に居を移し、10年間書き留めてきた詩がこの詩集には収められている。
梨木香歩の序文(+帯)にはこうある。
「ウチダさんは生活も仕事も詩から遠ざけなかった」
居場所が変わっても、仕事が変わっても、生活が変わっても、言葉を手放さない人、詩人とはこういう人を言うのだろう。
土のような重みと風のような軽やかさ、旅のように飛距離のある言葉を持った詩が50篇。
何度でも読み返して欲しい。
本書はウチダさんがライフワークにしている「朗読会」のような構成を目指して製作された。
黒地の紙に詩が浮かび上がり、合間の白地の紙には閑話よろしく語りが綴られる。
田唯(Allrights Graphics)による特殊な装丁を可能にしたのは地元長野の藤原印刷。
校正は牟田都子。
著者:ウチダゴウ 装丁:田唯(Allrights Graphics) 出版社:三輪舎 2020.12 初版 B6版変形上製/160p
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