散歩行こか、車いす俺押すで、って言ったらばあちゃんが喜んで、でも看護師さんが二人がかりで担ぎ上げてくれて大仕事やった時あった。俺はやり方も分からんから、ベッドの取っ手を握っとくしかできんかった、ずっとついてるクーラーの風で冷たなっとった。悪いから、もう散歩に誘ったりはせんとこうと思った。(本文より)
子どもの視点と語彙で描かれた世界が素晴らしかった。
松本大洋を思い起こさせる。ピカピカでキラキラやった。
第一詩集「する、されるユートピア」で中原中也賞を受賞した注目詩人井戸川射子による、初めての小説集。
児童養護施設に暮らす小学5年生の集(しゅう)。園での年下の親友・ひじりとの楽しみは、近くの淀川にいる亀たちを見に行くことだった。温もりが伝わる繊細な言葉で子どもたちの日々を描いた表題作と、小説第一作「膨張」を収録。
野間文芸新人賞受賞
著者:井戸川射子 出版社:講談社 2021 初版 ハードカバー 171p
新刊書籍