詩の神に所在を問えば ねむそうに答える All around you
風にだけ読める宛名が花びらに書かれてあってあなたへ届く
はなびらはやさしい地雷 踏むたびに胸のあたりがわずかに痛い
雪だったころつけられた足跡を忘れられないひとひらの水
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第2歌集「きみを嫌いな奴はクズだよ」以来、実に6年ぶりとなる木下龍也の第3歌集です。
6年間の歌200首と本書のために書き下ろした100首、合計300首から約120首に厳選。
●造本について
装丁は『あなたのための短歌集』に続き、名久井直子さんです。
本書は布貼りの上製本で「墨田織」という布を使用しています。
初版では墨田織の色味の異なる5種類を使用しています。
初版分を揃えるためには1色分の布では足りず、
複数の色が必要とわかり、特にお気にいりの5色を本にできました。
短歌の味わいが異なるように、手にした色の本との出会いも、
読者に楽しんでいただけたら幸いです。
※布色はご指定いただけません。
●挿み込みについて
本書のために詩人の谷川俊太郎さんと対談を行いました。
その様子をリーフレットにして挿み込みました。
2022年9月の谷川さん宅での詩人と歌人のお話です。
●収録歌より10首
詩の神に所在を問えばねむそうに答えるAll around you
昔より優しくなった死にたさに「どうしたんだ?」と問いかける夜
生きてみることが答えになるような問いを抱えて生きていこうね
ねむれないおまえのためにできるのは灯りをひとつひとつ消すこと
波ひとつひとつがぼくのつま先ではるかな旅を終えて崩れる
雪だったころつけられた足跡を忘れられないひとひらの水
はなびらはやさしい地雷 踏むたびに胸のあたりがわずかに痛い
目を上下上下上下と動かして百年前の詩をうすくむく
ひっぱってくれるタイプの犬だったときおりぼくにふりむきながら
鈴を手で包んでそっと揺らしたらちいさくにぶいぼくだけの音
著者:木下龍也 装丁:名久井直子 出版社:ナナロク社 四六変形 144p
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