いかに生きるべきか
という問い
から離れれば離れるほど人生は美しい
蟋蟀ほどにもヒトは
全身で宇宙の寂しさをうたう
ことができない
それでも山をじっと見つめていると
山は山自身を脱いでゆく
ようにみえる
もしきみにじっと見つめられたら
ぼくはぼく自身を脱いで
何になるのだろう
x(いかに生きるべきか——)より
第4回大岡信賞受賞作品
古希を迎えた野村喜和夫、新境地をひらいた53篇の最新詩集。
いま存在していることの不思議さを感じるままに言葉の刺繡として美しく縫い込み、人生をうたう。
「港の人」らしい稀に見る美しい装幀。
最後の「私は思い出す」という1篇が極上だ。
装画:津上みゆき「View-24seasons」より「No. 17」
著:野村喜和夫 装幀:間奈美子 アトリエ空中戦 出版社:港の人 2022 ソフトカバー/フランス装 212p
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