西尾さん曰く、「焼きたてのパン」のような詩集
パンを食べることが幸せであるように、この詩集を読むこともひとつの幸せだろうと店主は思います。
「歩きながらはじまること」はこれまで西尾さんが発表してきた五つの詩集を編んだアンソロジー詩集です。
『フタを開ける』(2010)、『朝のはじまり』(2010)、『言の森』(2012)、『耳の人』(2014)、『耳の人のつづき』の5冊がこの本一冊に収められています。
これまでの西尾さんの集大成、そして西尾さんの世界への入口とも言えるでしょう。
私家版として発表されたもう手に入らないものもあるのでファンの方にとっても本当に嬉しい一冊です。
わたしは「遅い言葉」という詩と「人」という随筆が好きです。
しかしここでは「帰宅」という詩を紹介させて頂きます。
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春風は
野原に生まれる
鹿と静かに見つめ合い
苔の道を歩く
馬酔木の白い花は
薫りのトンネル
小川のささやき
耳に優しく
水と光が流れてゆく
空
どこまでも青く
心
どこまでも穏やか
気がつくと
家に着いていた
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装丁も佇まいも西尾さんの言葉から生まれた紙のようで素朴と優しさに溢れています
素敵な帯文は葉ね文庫の池上さん
著者:西尾勝彦 解説:Pippo 出版社:七月堂 2020 ソフトカバー 3刷
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