大切なものを手に入れたくて写真を撮り続けていたら、
私達には本当の名前なんてない事に気が付いた。
あなたは、暗闇の中で鈍い光を放ちながら確かにそこに存在している。
その価値を決めるのは他の誰でもない、自分自身なのだと伝えたい。
私は宝石を拾い集めて手の中にしまっては、時々愛おしく触っている。
(あとがきより）

鈴木敦子写真集。
東京から福井へと帰郷し、3年間に撮られた写真を編集。
手のひらに収まる赤い宝石箱のような本に100枚近くの作品。
「鈍い光」とは正にその通りで、一貫して作品に漂っている、あるいはぎりぎりの発光は淡く、鈍い。
記憶の断片とも言えるような幾つものイメージが見るものを揺さぶる。
実際に僕は揺さぶられ、宝物を共有できる幸福感に包まれました。
作品のイメージとそれを支える製本を含め、素晴らしい作品だと思います。
是非手にとって欲しい。

Writing by Kotaro Iizawa（photography critic）　執筆｜飯沢耕太郎（写真評論家）
Translation by Robert Zetzsche　翻訳｜ロバート・ツェツシェ
Printed and Bound by Sunmcolor　印刷・製本｜サンエムカラー
Printing direction by Takao Maekawa　プリンティングディレクター｜前川孝雄