”窮地に陥った人間、閉じ込められた者、疎外された者、戦争や暴力の被害者-彼らが「それ」を言葉にして欲しいと頼む例は、後を絶たない。
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ずいぶん時間がたってから、私はようやく気づいた。彼らが私に書いてほしいと言ったのは、自分たちの体験した不正と苦しみを、世間に事実だと認めさせ、記憶に留めてほしいからだけではなかったことに。彼らは、すべてが起こる前のかつての自分たちがどんな人間だったかを認め、覚えていてほしかったのだ。人に真剣に受け止められるに値する人間として、個人として、主体的人間として。"
「憎しみに抗って」がベストセラーとなったドイツのジャーナリスト、哲学博士カロリン・エムケの著作。
「語ること」「聞くこと」「聞いたことを伝えること」について、ジャーナリストとしての実体験を元に書かれた8つのエッセイ。
「なぜならそれは言葉にできるから」――証言することと正義について
序章/1 さまざまな証人、または――我々に語るのは誰か?/2 精神的打撃、または――「理解しようと試みない」/3 「物体」への変身/4 二重化、または――リズム、儀式、物、脱出/5 去る、または――沈黙の時/6 信頼、または――それでも語る
他者の苦しみ
拷問の解剖学的構造
リベラルな人種差別
現代のイスラム敵視における二重の憎しみ
故郷――空想上の祖国
民主主義という挑戦
旅をすること 1
旅をすること 2――ハイチを語る
旅をすること 3――旅のもうひとつの形について
著者:カロリン・エムケ 訳:浅井晶子 出版社:みすず書房 2019 2刷 ハードカバー 243p
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