"アウシュヴィッツの寝床に横たわっているとき、ひたすら祈りに没頭している女が目に入った。そのポケットからパン切れがはみ出していた。飢えを共にする同室の女がこっそりと忍び寄ると、いのちそのものであるそのパンの切れ端を奪い取った。それを見ていたわたしは動転した。けれど、わたしもそのパンがほしかった。"
ハンガリーのユダヤ人だった著者は16歳のときにアウシュヴィッツに強制収容され、母と妹は到着するなりガス室で殺された。
家族でただ一人生き残りとなった著者は長い沈黙ののちに言葉を紡ぎはじめた。
著者は中高生たちへ経験を語る活動をはじめ、後にナチスへの告発ではなく、恐怖と死を「生きて」、いかに人生を取り戻したのかを本書に綴っています。
カバーの写真はマイケル・ケンナ
著者:マグダ・オランデール=ラフォン 訳:高橋啓 出版社:みすず書房 2013 初版 ハードカバー 182p
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