1枚1枚に、人生が集約されている。
そして人生はまた、1枚の写真へ収斂されていく。(梨木香歩)
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鷲尾和彦写真集。
「極東ホテル」「To The Sea」など通り過ぎていく風景、あるいはすれ違っていく人々を写してきた写真家が今回目の当たりにしたのはオーストリア・ウィーン西駅に波のように押し寄せていた難民だった。
欧州から日本への帰途で偶然出会ったその光景を3時間の間に撮影。
6500万人を超える難民の半数は18歳以下の子どもだそうだ。
ここに写されている父親が自分だったら、カメラを見つめる少女が自分の娘だったら、、
そんなことを考えずにはいられない。
例えば環境問題などと違って、難民や戦争の問題はどうしても自分事として想像するのが難しかった。ニュースを見たり、webの記事を読んだり、新書で目を通しても、その痛みがどうしても手に届かない所があった。ただこうして写真家の目を借りて人々の姿を正面で捉えて見ると、やはり迫ってくるものがある。
生まれ育った土地を逃れ、不安を顔に写し、新しい大陸へ移動していく事は、どういうことなのか。
現実にある事として、確かな感触をこの手に感じ、この目に焼き付ける。
以下は版元からの今出版することの想いが集約されたコメントです。
『「移動」が制限されるパンデミックの最中にある私たちに、これらの写真はどのように写るでしょうか。
国籍も人種も育ってきた環境も違う人たちの人生に思いを馳せ、自分の人生を重ね合わせる——そんな静かな時間を、この本を通して持っていただけたら幸いです。』
別冊栞:「人生が集約されている / 梨木香歩」
著者 Author:鷲尾和彦 Kazuhiko Washio 寄稿:梨木香歩(作家)デザイン:デザイン 須山悠里 出版社:夕書房 2020.6 A4変形・上製・栞付き ダブルトーン+カラー/88p
新刊書籍