私の中に海があり
愛という潮騒が立ち騒いている
ひどく懐かしい歓喜の音楽
私の中の小さな海が
すべての海とつながっている
私たちはみな音楽なので
神の五線譜の上で暮らすのだ
『潮騒』
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田口犬男、12年ぶりの詩集です。
田口犬男の詩集を出すことがナナロク社創業からの悲願だったという。
当店での企画「ナナロク社の詩と造本展」では先行発売し、破格の売り上げを記録しました。
音楽が、絵画が、宗教が、あらゆる芸術が言葉に収斂され、連なり、詩という無形の真実に限りなく近づいていく。言葉を初めて獲得出来たかのような感覚。十二年間、詩人は言葉が降りてくるのを待っていた。言の葉が折り重なるのを季節のように眺めていた。その重み、静けさ。
美しく、気高い詩集。
装幀:名久井直子
田口犬男 : 1967(昭和42)年t東京生まれ。慶應義塾大学文学部中退。 Western Maryland College卒業。『モー将軍』(思潮社 2000年)で第三十一回「高見順賞」受賞。その他刺繍に『聖フランチェスコの鳥』(思潮社)など。
著者:田口犬男 出版社:ナナロク社 2021.1 初版 ハードカバー 121p
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