私小説家として知られる上林暁の随筆集です。作家たちとの思い出、懐かしい本の記憶。何よりも文学への愛情。小説が、そこに生きている人が、好きなんだという思いが一つ一つの文章を通して伝わってくる。それは紛れもなく生への肯定なのだと思います。読後、装丁が赤でデザインされていることに私は感動しました。こういう本が読み継がれていく限り、文学というのは脈々と血潮のように流れていくものなのだと思いました。「昔日の客」「星を撒いた街」と並び、夏葉社さんの文学への愛情を感じられる素晴らしい一冊です。
著者:上林暁 撰:山本善行 / 出版社:夏葉社 / 2012.7 初版 / ハードカバー / 233p 19 x 13cm
新刊