『文学は、経済学、法律学、医学、工学などと同じように「実学」なのである。社会生活に実際に役立つものである。そう考えるべきだ。特に社会問題が、もっぱら人間の精神に起因する現在、文学はもっと「実」の面を強調しなければならない。』(文学は実学である)
荒川洋治さんのベスト・エッセイ集。
1992年から2020年まで28年間に発表されたエッセイより86編を精選。
『夜のある町で』『忘れられる過去』『世に出ないことば』『黙読の山』からの諸編に加え、同時期の名編と単行本未収録の追悼「加藤典洋さんの文章」など近作8編を収める。ことばと世間、文学と社会、出版と時世に、目を凝らし耳を澄ませてきた荒川洋治。その文章世界がこの一冊に凝縮している。(版元より)
「いま本を読み、本について書く日本語の使い手の中で、間違いなく最高のひとり」(高橋源一郎)
「同時代に荒川洋治という書き手をもつのは、この上なく幸せなことなのだ」(池内紀)
「(本は)読者の眼によりそこから作者の思いを超えて生きる。著者はその言葉と本という生き物に惹かれている」(松山巖)
「書き手と読み手が目のまえの作品を尊重しつつ、それを超えたもっと広い意味での《実学としての文学》を共に心から愛したときにだけ、その「感想」は「感動」を超えるのだ」(堀江敏幸)
全ての学問は国の根幹を成すものであり、継続的に個人の幸福を追求し、将来へ向かって発展させて行くべきもので、結果が出ないだとか役に立たないものだとか言う風潮には呆れかえるしかありません。自らの首を絞め、未来を生きる人々の生活を著しく損なうものです。
本書は今こそ読まれるべき本であり、そういった危機感から生まれた本だと思う。恐らく編集者にもそういった意図があったに違いないでしょう。
著者:荒川洋治 出版社:みすず書房 2021 3刷 上製本/四六判 タテ188mm×ヨコ128mm 352p
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